ピアソラXピアノ/ 下山静香、PIAZZOLLA PIANO / Shizuka Shimoyama
ピアソラXピアノ/ 下山静香、PIAZZOLLA PIANO / Shizuka Shimoyama
- メランコリコ・ブエノスアイレス
Melancólico Buenos Aires - 前奏曲 1953
Preludio 1953 - ピアノのための組曲 第2番 1.夜想曲
Suite para piano No.2 1.Nocturno - ピアノのための組曲 第2番 2.ミニアトゥーラ
Suite para piano No.2 2.Miniatura - ピアノのための組曲 第2番 3.バルス
Suite para piano No.2 3.Vals - ピアノのための組曲 第2番 4.クリオージョの踊り
Suite para piano No.2 4.Danza criolla - 大草原の夕暮れ
Tardecita pampeana - 3つの前奏曲 1.レイジアのゲーム(ピアノのためのタンゴ前奏曲)
Trois préludes 1.Leijia’s Game (Tango prélude) - 3つの前奏曲 2.フローラのゲーム(ピアノのためのミロンガ前奏曲)
Trois préludes 2.Flora’s Game (Milonga prélude) - 3つの前奏曲 3.サニーのゲーム(ピアノのためのワルツ前奏曲)
Trois préludes 3.Sunny’s Game (Valse prélude) - ちっぽけな人生
La vida pequeña - アディオス・ノニーノ
Adiós Nonino - バルシシモ
Valsisimo
下山静香プロフィール
桐朋学園大学卒業。同室内楽研究科修了。95年リサイタルデビュー。99年、文化庁派遣芸術家在外研修員としてマドリードへ。故R.M.クチャルスキ、M.サバレタのもとで研鑽。ロドリーゴ生誕100年にはマドリード、ベルギーなどでの記念コンサートに出演。
その後バルセロナのマーシャル音楽院にて、C.ガリガ、故C・ブラーボ、故A.デ・ラローチャに
師事。マドリード、アランフェス、バルセロナほかに招かれリサイタルを行う。
帰国後はオール・スペインプログラムでのリサイタルを数多く開催、自治体やカルチャーセンター、大学(京都外国語大学、東京大学、東京藝術大学、慶應義塾大学、上智大学)に招かれて特別講義やレクチャーコンサートを行なっている。また、スペイン・ラテンアメリカの室内楽、ピアノライブ〈ラテンアメリカに魅せられて〉、美術・文学ジャンルの造詣も生かした〈音楽×美術〉〈おんがく×ブンガク〉などの斬新なコンサートシリーズを継続し、これまでにない切り口が話題となっている。
ソロのほか、室内楽・二重奏も重要な活動軸とし、これまでにウィーン・ヴィルトゥオーゾ、チェコフィルハーモニー六重奏団、S.フッソング(acco)、M.ホッセン(vl)、D.トカチェンコ(vl.)、R.シメオ(trp)など数々の海外アーティストと共演。
NHKスペシャルやドラマ、美術展などにおいてピアノ演奏を数多く担当。NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」、NHK-BS「ぴあのピア」、NHK・Eテレ「ららら♪クラシック」、TBS-BS「本と出会う」、NHK・FM、フランス国営放送ラジオなどに出演している。CDはソロで12枚、ヴァイオリニスト寺島貴恵とのユニット「デュオ・アニミス」として2枚をリリースしている。
現在、各地で精力的な演奏活動を展開するかたわら、執筆も旺盛に行なう。さらに翻訳・朗読・舞踊とそのフィールドは進化し続けている。また、桐朋学園大学音楽学部および東京大学教養学部にて、スペイン、ラテンアメリカ系音楽の講義を担当。2012年より、NPO法人JML音楽研究所にて「スペイン音楽演奏講座」を開講。2015年からは「下山静香と行く 音楽と美術の旅」(主催:郵船トラベル)を実施し、バルセロナとマジョルカ、アラゴン、そしてキューバに赴き演奏している。
PTNA正会員/審査員/アドヴァイザー、日本スペインピアノ音楽学会理事。
楽曲について
メランコリコ・ブエノスアイレス Melancólico Buenos Aires (1957) 編曲:壺井一歩
自作のタイトルに「ブエノスアイレス」を使った最初の作品で、感傷的なイメージよりもむしろ闘いモードでダークな魅力を感じる。オリジナルではヴァイオリンソロの泣きのメロディが印象的で、ピアソラが高く評価していたヴァイオリニストのエンリケ・フランチーニとその夫人に捧げられている。
前奏曲1953 Op.17 Preludio 1953 (1953)
現代的な不協和音が聴こえるが、その響きは美しい。オスティナート・リズムや前打音、ふとしたフレーズの運びに、ピアソラの顔が見え隠れする。短いながら、どこか重しのようなものを感じるこの曲は、私にとってはすでに「ピアソラ」である。
ピアノのための組曲 第2番 Op.13 Suite para piano No.2 (1950)
ピアノのために書かれた組曲としては2作目。1作目はOp.2で、ドビュッシーやラヴェルといったフランス近代音楽からの影響が感じられる。ここに収録した第2番(全4曲)は、いわゆる「ピアソラらしさ」はみられないものの、書法や音楽に成長がみられ、よりまとまりのよい作品となっている。
〈夜想曲〉は、夜のしじまの中、徐々に熱を帯びていくような不思議な世界。〈ミニアトゥーラ〉はなかなかの賑やかさで、落ち着きなくあっという間に過ぎる。新古典主義的な趣をたたえる〈バルス〉は、どこか神秘的でもある。最後に置かれた〈クリオージョの踊り〉はマランボ風。アルゼンチン民族主義的作風が現れていた頃のヒナステラを彷彿とさせる曲調で、イレギュラーなアクセントが効いている。
大草原の夕暮れ Tardecita pampeana Op.10(1949)
アルゼンチン北西部に広く分布するフォルクローレの一種、ビダリータに着想を求めており、ピアソラとしては珍しい部類の音楽。雄大なパンパ(大草原)の地平に太陽がゆっくりと吸い込まれていくさまが目に浮かぶような、知られざる佳曲である。1951年には室内管弦楽団用に編曲されている。
3つの前奏曲 Trois preludes(1987)
“タンゴの革命児”ピアソラは、晩年までクラシックと関わり続けた。子供の時分から親しんだピアノのための作品の集大成として生まれたのが、この《3つの前奏曲》である。
「タンゴ前奏曲」と副題がつけられた〈レイジアのゲーム〉の譜面には小節線がなく、即興的な曲想をもつ。どちらかというとバンドネオン的なイメージで書かれていると言える。続く〈フローラのゲーム〉はミロンガのスタイルをとる。ピアソラが書くミロンガは概してゆったりとしたテンポで物憂い曲調が多いが、ここではクラシック的な書法と融合し、どこか沈潜していくような存在感をもつ。最後を飾るのは〈サニーのゲーム〉、ドラマティックなワルツである。3連符を基調に、旋回の感覚を伴いながら連綿と続いていく音楽が魅惑的だ。
ちっぽけな人生 La vida pequeña(1984) 編曲:下山静香
オリジナルはオメロ・エクスポシトの詞による歌曲で、ピアソラが音源に残さなかった未発表曲に数えられる。「君のいない人生は なんてちっぽけなのだろう / 魂のなんという静けさ!/ 何のために苦しむのか? / 何のために待つのか? / 誰のために生きるのか・・・」
アディオス・ノニーノ Adiós Nonino (1959/1988)
1959年10月、プエルト・リコでのツアー中に父ビセンテの訃報を受けたピアソラは、悲しみをこらえてその日もステージに立った。翌月初旬にニューヨークに戻ったピアソラは、部屋にこもってピアノに向かい、かつてパリ時代に父のために作った〈ノニーノ〉(ノニーノはビセンテの愛称)の冒頭のモチーフから曲想を膨らませた。父を喪った深い悲しみ、そして彼への愛と感謝から生まれたこの《アディオス・ノニーノ》は、ピアソラ終生の代表作となった。そして1988年、クラシック畑のピアニストが演奏することも想定し本格的なピアノ独奏曲として新たに編曲されたのが、ここに収録したバージョンである。ピアソラが1969年に再結成した五重奏団で起用したピアニスト、ダンテ・アミカレリのために書いたカデンツァが生かされている。
バルシシモ Valsisimo (1962?)
「バルス」の最上級、「とってもワルツ」というタイトルがつけられている。洗練されたなかにけだるさが漂う佳曲。のちに書かれた〈サニーのゲーム〉の原曲となった。
Shizuka Shimoyama